行動に影響を与えるもの

 TEDxMileHigh「あなたの脳の実行機能がどのように機能するか、そしてそれをどのように改善するか”How your brain’s executive function works — and how to improve it”」から。

 マシュマロ実験という心理学の実験があります。幼児の前にマシュマロを1個置いて15分待てればもう一つあげると約束してひとりで部屋で待たせます。おあずけ状態で待たされるので子供にとってはストレスになりそれを我慢できるか見る実験です。

 

 今回の実験では「あなたと同じグループ(緑のTシャツを着ている)の子は待つことができた」と伝えることで待つ傾向が上昇しました。
 これは自分が属していると信じるグループによって行動に影響があらわれるということになります。しかも、グループは本当にあるわけではなく伝えられただけの創造の産物でしかなくても効果がありました。

 

 子供だから周りから影響されたのだと考える人もいるかもしれませんが、大人でも所属しているグループ(環境)からの影響はうけています。
 そのグループの判断基準で自分の行動に制限を加えていると、気が付いた時には自分の判断基準ではなくグループの基準で動くことが当たり前になってしまいます。

 このこと自体が悪いのではなく、その基準が現状に対して妥当かどうかを判断せずに前例踏襲してしまうことに問題があります。

 

 朱に交われば赤くなる。色に染まると言いますが、それが良いのかどうかは意識したいものですね。
参照
”How your brain’s executive function works — and how to improve it” Sabine Doebel 2018 TEDxMileHigh

スタートする小さな方法

 Psychology Todayの記事「「できない!」を超えて”Moving Beyond “I Can’t!””」から。

 誰でも何かを始めることが億劫な時があります。簡単な内容だと自分でもわかっているのに気が乗らないのでつい先延ばしにしてしまう。そんな時には気分転換をするとかちょっとだけ動いてみるなど、自分なりの方法を持っている人もいます。

In the case of activation, one of the best things you can do is ask yourself, “What needs to change right now so I can begin?”
アクティベーションの場合、あなたができる最善のことの1つは、「私が始めることができるようにするために今何を変える必要があるのか​​」と自問することです。

 元記事はADHDを患っている人に向けたものですが、この方法は誰にでも有効です。
 自分に問う質問を「気分、場所、期待、エネルギーのレベル、取り組み方」の5つの視点で考えてみると

“What can I do to create a shift in my emotional landscape right now?”
「今、私の感情的な状況を変えるために何ができるでしょうか」

 疲れや圧倒されて動きだせない気分なら、休憩や散歩をするか自信について話しをする。

“What about this space isn’t working for me?”
「このスペースはどうしたら良いのでしょうか?」

 散らかって集中できない環境なら、視覚的な情報を減らす。場所を移動する。

“Am I making this harder than it needs to be?”
「私はこれを必要以上に難しくしていますか?」

 完璧主義を手放す。良いものを目指しすぎない。

“Do I need to rest or be active for a bit to rejuvenate?”
「私は休むか、健康のために少しアクティブにする必要がありますか?”

 水分補給や軽食などのエネルギーを補給するか、ストレッチなどで軽く体を動かしてみる。

“Do I need help or more information? What is truly my goal here, and how can I stay on track?”
「助けが必要ですか、それ以上の情報が必要ですか。私のここでの私の目標は何ですか、そしてどうやって軌道に乗ることができますか?」

 先に必要な情報やリソースを探す。

 対処方法はあくまでも一例にすぎません。これらは自分がスタートできない・動けなくなっていると気づいたときに自問すると新しい道が見つかるかもしれません。

 

In sum, starting is, in essence, an act of change.
要するに、スタートは本質的に変化の行為です。
Recognizing the patterns of our resistance allows us to take a moment to pause, to reframe our narrative, and to intentionally choose the best way to begin.
私たちの抵抗のパターンを認識することで、私たちは一時停止し、物語を見直し、そして意図的に始めるための最善の方法を選択することができます。

 

 コーチングではスモールステップで最初の一歩を踏み出すことを大事にしています。動けないことで悩んだり罪悪感を覚えるのなら、関連する小さな変化から始めることがおすすめです。
参照
Moving Beyond “I Can’t!”” Michelle Frank, Psy.D., and Sari Solden, M.S. 2019 Psychology Today

目標もアップデートしましょう

 Psychology Todayの記事「それは私が人生の目標を達成する上で役立ちますか?“Will It Help Me Achieve My Life Goals?”」から。

 

 人生の目標があれば、選択肢に優先順位をつけやすくなり迷うストレスも少なくなります。どんなことでも漫然と取り組むよりも目標があったほうがモチベーションも湧いてきます。

 ただ、毎日の勉強や健康管理やダイエットなど単調な繰り返しでモチベーションの上がりにくいこともあります。目の前のことを片付ければ目標達成に一歩近づくと信じられれば良いのですが、長期間を必要とすることでは自分の成長が見えにくいので迷いが生まれたりモチベーションが徐々に低下していきます。

 また、人生の岐路と言われるような大きな決断に迫られる時もあります。進学や転職などその決断が後の生活に大きな影響を与えると思える選択です。

There are no right-or-wrong answers to any of these questions. The so-called correct answer depends on your values, interests, and goals.
これらの質問に対する正しい答えはありません。いわゆる正しい答えはあなたの価値観、興味、そして目標によって異なります。

 

But one thing is for sure; if your efforts aren’t in line with your goals, you will not accomplish them.
しかし、確かなことが1つあります。 あなたの努力があなたの目標と一致していないならば、あなたはそれらを達成しないでしょう。

 自分一人では努力している=忙しい状態で、客観的に自分の現状を振り返れないこともあります。話しを聞いてくれる誰かがいるだけで方向修正がやりやすくなります。

 

then when faced with difficult forks in the road, you can ask yourself one simple question: “Will it help me achieve my life goals?”
人生の岐路に直面したとき、あなたは自分で一つの簡単な質問をすることができます:「それは私が人生の目標を達成する上で役立ちますか?」

 この時の目標は、自分で決めた自分のための目標でないと遠回りになることが多くなります。
 今までは誰か(親や所属組織など)が決めた目標を達成するために努力していれば、一定の評価をもらえていたかもしれませんがこれからもそれが続くとは限りません。

 また、状況が変われば目標も変わるのが当然です。もちろん遠くの目標に到達するためには継続することが大切ですが、家族の状況に変化があったとか大きな出来事があったときには、自分が本当に大切にしたいことは何なのかを考え直す良い機会かもしれません。
参照
Will It Help Me Achieve My Life Goals?” Jim Taylor Ph.D. 2019 Psychology Today

完了までかかわれることがヤル気を上げます

 TEDxRiodelaPlata「仕事を楽しくするのは何か”What makes us feel good about our work?”

 

 管理職やリーダーシップ研修のプログラムの中にはメンバーのモチベーションを上げる方法なども含まれます。
 メンバーがどれだけやる気を出して仕事に取り組んでくれるかでもちろん成果に違いが出てきます。

 

 作業効率的なことだけを考えると分業で一人に一つの工程を任せる方が習熟して作業が早くできます。これが自動車会社のフォードが大量生産に採用した方法です。
 ところが、この方法では働く人のモチベーションが上がりません。

 フォードの生産方式とは逆にものが出来上がる(仕事が完了する)まで見届けたほうが、働く人にとっては達成感もあり自己効力感も高まります。そして、仕事の完了を自分の手元から離れた、部署から離れた、エンドユーザーに渡った、そのさらに先とどのタイミングだと考えるのかにも人それぞれ違いがあります。

 

 仕事の全体像が見えているリーダーや上司にとっては気にならない些細なことかもしれません。しかし、メンバーのモチベーションを上げることを考えると自部門が全体の中でどのようにかかわっているのか、その結果どうなったのかなども伝えることが大切です。

参照
What makes us feel good about our work?” Dan Ariely 2012 TEDxRiodelaPlata
The IKEA effect: When labor leads to love” Michael I.Norton DanielMochon DanAriely 2012 Journal of Consumer Psychology

バーンアウトしやすい職場

 Quick and Dirtytips.comの記事「バーンアウトの5つの要因”5 Surprising Causes of Burnout”」から。

 仕事にやる気が出ないと言うとサボリのように受け取られることが多いですが、環境によっては誰でも陥る可能性があります。
 本人の気持ちの問題で自分でどうにかすることが社会人として当然だという見方が主流だと思います。そして、やる気の落ちている本人も、自己責任でどうにかしないといけないとさらに自分を責めて悪循環になる場合もあります。

 ところがWHOは仕事に意欲が出ない状態(バーンアウト:燃え尽き症候群)も”International Classification of Diseases:国際疾病分類”に取り入れています。医療機関に受診しに行くことも選択肢のひとつとして上げられる状態です。

 そもそも仕事量が過剰で忙しすぎてバーンアウトになることは分かりやすい原因ですが、それ以外にも要因は複数あります。

Pressure to Achieve:達成へのプレッシャー
Pessimism :悲観論
Isolation :職場での孤立
Mindless Social Media Consumption:無駄にSNSを使いすぎる
Income Inequality:所得格差

 本人にとって達成できる見込みのない目標はモチベーションが下がるだけです。また、自分の将来に対して明るい展望が描けなければやる気が落ちます。
 上司からのサポートのない状態も要因になります。トラブルが生じたときに一方的に責任を押し付けられるようでは信頼関係は作れません。

 労力に見合った収入を得ていないといった感覚やあまりに大きな所得の格差は、搾取されているような不公平感を助長します。

 

 達成不可能な仕事量や目標を提示したり、職場で孤立した状態を作るなどは厚労省のパワハラの定義にも該当する項目です。働く意欲の高かった社員がバーンアウトしてしまうような職場環境では離職も減りません。
 
 適正な仕事量になるように業務改善も必要ですが、同時に職場での良好なコミュニケーションも必要です。
参照
5 Surprising Causes of Burnout” Ellen Hendriksen, PhD 2019 Quick and Dirtytips
Measuring Burnout” C. L. Cooper S. Cartwright 2009 The Oxford handbook of organizational well-being
国際疾病分類の第11回改訂版 QD85 Burn-out” 2018 WHO

感情労働には働く環境が大切です

 WorkingNation の記事「感情労働はソフトスキルの育成で成長します“Emotional workers thrive with nurturing of soft skills”」から。

 人と直接関わる職業のなかで感情労働といわれるものがあります。
 看護師、保育士、ホテル従業員、CA、クレーム対応など自分の感情を抑えて笑顔で接客することを求められる仕事だとイメージしてください。

 自分の感情をコントロールするようなスキル、いわゆる自制心はトレーニングをすれば高めることができます

Exercising these skills depends on circumstances at work.
これらのスキルを行使することは職場の状況に依存します。 

 ですが、個人がトレーニングでスキルを高めても職場の制度が適していなければ能力の発揮は難しいようです。

 

 一例として英国の看護医療関係の研究チームが北米、欧州、豪などの16の地域で調査したところ、看護師は患者との個人的なつながりが良いケアを提供するうえで重要だとみなしていると分かりました。

When nurses successfully form these authentic relationships, they tend to find deep satisfaction and a sense of purpose in their work.
看護師がこれらの本物の関係をうまく形成するとき、彼らは彼らの仕事において深い満足と目的意識を見つける傾向があります。

 しかし、特に高齢の患者や認知症の患者のケアをする施設などでは、看護士の人数不足で十分に患者と時間を取って信頼関係を築くことができないと感じていることが分かりました。

When nurses aren’t able to deliver care the way they feel they should, they often end up feeling guilty and frustrated, leading to emotional burnout.
看護師が思い通りにケアを提供できないと、罪悪感や欲求不満を感じ、感情的に燃え尽きることになります。

 燃え尽きることを防ぐために「スイッチを切る」と言った人たちもいました。スイッチを切り患者と心からの信頼関係を築く事をやめて表面的な業務に集中するのです。

 今後、感情労働の分野はさらに広がる傾向にあります。感情労働に従事する人たちが、仕事の中で思いやりのある人間として能力を自由に十分に発揮するためにはそれに見合った職場環境の整備も必要になります。
参照
Emotional workers thrive with nurturing of soft skills”Livia Gershon 2017 WorkingNation
Reducing burnout and enhancing job satisfaction: Critical role of hotel employees’ emotional intelligence and emotional labor” Jung Hoon Lee,Chihyung Ok 2012 International Journal of Hospitality Management
Increasing Emotional Intelligence through Training: Current Status and Future Directions” Nicola S. Schutte, John M. Malouff and Einar B. Thorsteinsson 2013 International Journal of Emotional Education