参加型研修とは

 よく行われている講義中心の研修では、受講者の意識は講師の話しを聞くことに集中しています。この方法は既に答えの決められている知識の修得には効果がありますが、個別対応を求められる人とのコミュニケーションのような課題では、職場に戻ってから聞いただけの知識で行動を起こせるかどうかは個人の状況によりまちまちです。

 それに対して参加型研修では講師の話しを聞き、小グループでお互いに意見を交換しながら共同作業に取り組み、その後、共同作業内でのできごとを振り返えることで他者の視点や各自の違いに気づき、自分なりの答えをだすことを重視しています。

 答えを人から教わるだけではなく、自分で実践できる方法を見つけ出すプロセスを体験してもらいます。

 だから「やるといい事がありそう」「自分にもきっとできる」といった行動に結びつくモチベーションも高まり、職場に戻ってからも研修内で自分自身で気づいた”学び”を実践し続けることができるのです。

 

 参加者同士で話す時間を作れば、それだけで参加型研修になっているという勘違いがあります。

 ファシリテーションのしかたによっては、話しが盛り上がらずに気まずい思いをし、ますます人と話すことから距離を置こうとする人が出かねません。

 繰り返しになりますが、参加型研修は研修内での学びを職場で実践し続けることを最終的な狙いとしています。そのための共同作業(ワークショップ)であり小グループでの意見交換です。

 ファシリテーターが参加者にとって積極的に参加しやすくなる雰囲気を作っていくことが研修成功の秘訣です。

 

人生の目的は自分で決める

 Psychology Todayの記事「人生の中であなたの目的を見つけるための近道”The Shortcut to Finding Your Purpose in Life”」から。

 振り返ってみると学校の中で人生の目的なんていう話しをした記憶が無いですね。年代や地域によってはあったのかもしれませんが、将来の夢として何か職業を聞かれたような気はします。
 夢=職業というところが既におかしい気がしますが、教育現場にも諸事情があるのだと思います。そもそも小学生だと知っている仕事のイメージが表面的なものだけでしょう。

 

How to settle on a purpose that fits your current life stage? There is a technique you can use that is immensely valuable – but astonishingly most people ignore it.
 あなたの現在のライフステージに合った目的をどうやって決めますか?非常に貴重なあなたが使用できるテクニックがあります – しかし驚くべきことにほとんどの人はそれを無視します。

 Interview your future self
 将来のあなた自身にインタビューしてください。

 NLPの手法にタイムラインという自分の未来をリアルに想像して、そこから現在の課題を解決する方法がありますが、ここではそうではなく、自分のロールモデルになりそうな人にインタビューしてアドバイスをもらうという方法です。

 役立つアドバイスもたくさんあるとは思いますが、時代に合わせて価値観も変化してきます。ロールモデルの人が現役だった頃の世間の情勢と現在がどのように変化したのかも考慮して聞く必要があります。
 

Experiments have shown that when people are made to think in detail about their future selves, they are more likely to make better financial planning decisions, show altruistic behavior, and make more ethical choices.
 実験は、人々が自分たちの将来の自己について詳細に考えさせられたときに彼らはより良い財務計画の決定をし、利他的行動を示し、そしてより倫理的な選択をする可能性が高いことを示した。

 自分の将来について考えることはポジティブな効果があります。この他にもその将来を実現するために、小目標を立ててそれを達成すれば脳内物質のドーパミンが活性化して気持ち良くなり、さらに行動したくなるなどの好循環がおきます。

 

 二日続けて2~3時間のセミナーを受講する機会があり、どちらも価値観や達成したい計画の目的を重視する内容でした。
 人に説明すると、ひとりで考えていた時には明確にしたつもりでも案外と煮詰まっていないことが分かります。私たちはやり方については、説明したりされたりすることに慣れていても、目的や価値について人と話す機会は意識していないとなかなか作りません。
 
 目的も一回で完璧に仕上げるのではなく、行動してまた人の意見を聞いてブラッシュアップしていくことで、より自分にしっくりくるものができてきます。
 大局観を持ったロールモデルになってくれる人と出会うのは難しいかもしれませんが、コーチングのコーチのように傾聴して受け止めてくれる人と話すことで視点を増やすことはできます。コーチでなくとも気の合う仲間同士で集まって(今ならオンラインでも)互いに聞きあう場を作っていければ人生の目的を決めることも促進されます。
参照
The Shortcut to Finding Your Purpose in Life” Karl Pillemer Ph.D. 2016 Psychology Today
The Legacy Project

好奇心は才能を上回る

 The Atlanticの記事「学校は学習において大事なことを見落としている“Schools Are Missing What Matters About Learning” 」から。

 学校での成績が良いことを生まれつきの才能だと思いがちですが、遺伝的な要因よりも環境の方が影響が大きいようです。 

Curiosity is underemphasized in the classroom, but research shows that it is one of the strongest markers of academic success.
好奇心は教室で強調されていませんが、研究はそれが学術的成功の最も強いマーカーの1つであることを示しています。

 また、厳しい躾けやスパルタ式の教育よりも、本人の好奇心を潰さずに興味の方向を誘導することができれば自ずから学びはじめます。

All in all, the Fullerton study is proof that giftedness is not something an individual is either born with or without—giftedness is clearly a developmental process. It’s also proof that giftedness can be caused by various factors.
全体としてフラートンの研究は、才能とはもって生まれたかどうかにかかわらず環境から独立したものではないことを証明しています。才能は明らかに発達過程です。才能がさまざまな要因によって開花する可能性があることも証明しています。

 

 会社や組織としても好奇心の高い人を採用したほうが、新しい取り組みや企画を考えることに積極的にかかわってくれそうです。そうすると、好奇心の高いことと成績の良いことがおおよそ兼ねていた時代はペーパーテストの点数を基準に採用すれば良かったのかもしれません。

 ただし、好奇心は強くないけれどテストの点数稼ぎは上手い人もいます。教えられたことをそのまま覚えるような効率の良い受験対策に特化した教育では、無駄なことにも興味の向く好奇心の強さは効率が落ちてしまいます。

 好奇心が強くて常識にとらわれないと何をやるか分からないという面もありますが、社内にその才能を伸ばしていく余裕があれば組織の発展に役立つ人材になります。
参照
Schools Are Missing What Matters About Learning” Scott Barry Kaufman 2017 The Atlantic

想像力が組織をまとめてくれる

 TEDGlobalLondon「なぜ人類は台頭したのか”What explains the rise of humans?”

 「サピエンス全史」や「ホモ・デウス」の著者であるユバル・ノア・ハラリさんの動画です。時期的には「ホモ・デウス」の出版される少し前のようです。

 単独ではチンパンジーにも勝てない人間が、何故世界中に広がって繁栄できているのか。
 この謎に対して「想像力を獲得したから」と説明しています。

The answer is our imagination. We can cooperate flexibly with countless numbers of strangers, because we alone, of all the animals on the planet, can create and believe fictions, fictional stories. And as long as everybody believes in the same fiction, everybody obeys and follows the same rules, the same norms, the same values.
 答えは私たちの想像力です。私たちは無数の見知らぬ人たちと柔軟に協力することができる地球上で唯一の存在です。そして、皆が同じフィクションを信じる限り、誰もが同じ規則、同じ規範、同じ価値観に従います。

 この想像力があるから、同じ虚構を信じて良く知らない他人とでも集団を作り共力できるのです。

 

 虚構というと字面から嘘とかでっち上げ(フィクション=ありえない作り話)のイメージが先行するのですが、そういったネガティブな意味ではなく、理想や希望に近いものです。

 経営戦略を作る時や個人のコーチングでも、まずビジョンを描きましょうと言います。この時のビジョンはミッション、目的、ありたい姿、価値、ビッグピクチャー等々表現は様々ですが、フィクションという言い換えも可能です。ただ、多くの人を巻き込み、強くそれを信じるにはやる気が出るような言葉を選んだほうが良さそうです。

 チームビルディングではチームのビジョンがメンバーそれぞれのビジョンと何らかのつながりがある事がモチベーションにも影響します。
 チームが良くなれば(ビジョンを達成すれば)自分にも良いことがあると思えればやる気も出ますが、チームがビジョンを達成しても自分には何もなければどこか他人事にしかなりません。

 

 人類が作り出した虚構としてお金、宗教、法人、国家など説明されますが、詳しくは「サピエンス全史」を一読されることをお勧めします。
 上下巻でページ数もそれなりにありますが興味があればすぐに読み終わるくらいに面白いです。
参照
What explains the rise of humans?” Yuval Noah Harari 2015 TEDGlobalLondon
サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福” Yuval Noah Harari 2016 河出書房新社

人の表情から感情を読む能力

 Psychology Todayの記事「犬は人の表情を良く読み取る”Dogs Watch Us Carefully and Read Our Faces Very Well”」から。

 先日、ネズミも共感する能力があるという記事がありました。
 では、ネズミよりも進化した犬はどうでしょうか。

 犬をペットにしている人からすると当然のことかもしれませんが、犬は人の表情からその時の感情もある程度読み取れるようです。

In one study of dogs and human facial expressions, a team of scientists led by Corsin Müller demonstrated that dogs differentiate between happy and angry human faces and that dogs find angry faces to be aversive.
 犬と人間の表情に関するある研究で、CorsinMüllerが率いる科学者チームは、犬が幸せな顔と怒った顔を区別し、犬が怒った顔を嫌がっていることを示しました。

The expression most commonly used by dogs was one in which they raise their inner brow, making the eyes appear wider and sadder, a look all dog owners will immediately recognize as “puppy dog eyes.”
 犬が最も一般的に使用する表現は、彼らが眉頭を上げることで、目がより大きく、より悲しく見えるようになり、すべての犬の飼い主がすぐに「子犬の目」として認識されるようになります。

 おねだりする時や叱られている時に見せる、下がり眉のような表情を意図して作ることができるようです。

 自分の表情が相手にどのような影響を与えているのかを犬でさえ理解しています。

 さて、私たちはどこまで自分の表情に気を配っているのでしょうか。あからさまに不機嫌な表情(態度も)は周囲の雰囲気も悪くします。
 特にリーダーや組織での立場が上の人ほどそれだけで周囲にマイナスの影響を与えてしまいます。

 リーダーでなかったとしても、新人の指導役などを任さられることはあると思います。その時、自分の表情や態度が相手の学べることにどれだけの影響を与えてしまうのかは心にとめておきたいことです。
参照
Dogs Watch Us Carefully and Read Our Faces Very Well” Marc Bekoff Ph.D. 2019 Psychology Today
Rats Feel One Another’s Pain” Mary Bates Ph.D. 2019 Psychology Today
”ネズミだって共感している”

 

ネズミだって共感している

 Psychology Todayの記事「ラットはお互いの痛みを感じる”Rats Feel One Another’s Pain”」から。
 
 ラットを使った動物実験で、他のラットが痛みを経験しているのを見ても痛みを経験しているように脳が反応することが実証されました。

 Researchers from the Netherlands Institute for Neuroscience have demonstrated that specific neurons in the rat brain are active both when a rat experiences pain itself and when it observes another rat in pain.
 オランダ神経科学研究所の研究者らは、ラットが痛みを経験した時と、それが別のラットの痛みを観察した時の両方でラットの脳内の特定のニューロンが活動的であることを実証しました。
 

 これは共感能力を人間だけではなく、ほ乳類全般で同じように持っていることの証拠になりそうです。
 
 アニマルセラピーという療法もありますが、今回はラット同士だけの話しなのでラットと犬や犬と人間といった別の種類との間でも機能するのかはまだ分かりません。

 

 人間同士では共感能力が機能しているはずなのに、そうは見えない人もたまにいます。

Neuroimaging studies in humans show that a region called the anterior cingulate cortex (ACC) is active both when we feel pain and when we witness the pain of others.
 ヒトにおける神経画像研究は、前帯状皮質(ACC)と呼ばれる領域が、痛みを感じるときと他人の痛みを目撃するときの両方で活性化していることを示しています。

This happens in the region of the ACC that is active in human neuroimaging studies of empathy, and it’s the same region where psychopaths show reduced activity.
これは人間の神経画像研究で共感しているときに活発であるACCの領域で起こります。そして、それはサイコパスでは活動が少ないことを示すのと同じ領域です。

 研究が進めばこの部分の活性化を薬で調整できるようになるのかもしれません。ただ、そうするとその人の個性はどうなるのでしょう?
 自分の期待通りに行動してくれない(共感を示してくれない)相手だからといって、相手が間違いだと一方的に決めつけることはできません。

 チームビルディングを含め、人と良い関係を築いていくうえで共感能力は大切です。同時に複数の人が集まる組織を健全に維持していくには多様性も必要になってきます。そのバランスを保つには、メンバー同士が常にお互いを良く知るように対話することかもしれません。
参照
Rats Feel One Another’s Pain” Mary Bates Ph.D. 2019 Psychology Today
Emotional Mirror Neurons in the Rat’s Anterior Cingulate Cortex”  Maria Carrillo 他  2019  Current biology

5秒以内に動くことの効果


 TEDxSF「自分をダメにするのを止める方法”How to Stop Screwing Yourself Over”

 

 テレビやラジオの司会としてやベストセラー作家としてなど様々な分野で活躍し「motivational speaker」と呼ばれているMel Robbinsさんの動画です。

 主張は単純明快です。
 「欲しいものに向かって、つべこべ言わずに行動しろ」という思想です。
 ただし、単純であることと簡単かどうかは別ものです。

 大概の人は欲しい結果やなりたい将来があるのに、あれこれ(結果やコスト、将来への影響など)考えて行動できないか、諦めてしまい行動しないで悩んでしまう。

 じゃあ、どうすれば良いのか?
 「5秒以内に動け」と分かりやすい方針です。
 分かりやすいからできるのかというとそれも別物ですが。

 だから強制的にでもできるように「自分自身をしつける”parent yourself”」ことが大切になります。
 

And by “parent yourself”, I mean it’s your job to make yourself do the crap you don’t want to do, so you can be everything that you’re supposed to be.
そして、「自分自身をしつける」とは、やりたくないことを自分でできるように仕向けることがあなた自身の仕事です。

 

 この考え方が役に立つ時もあると思います。でも、ウツなどで精神的に追い詰められてる時は逆効果なので、人それぞれの人生の山と谷を見きわめて使ったほうが良さそうです。

 特に間違えてはいけないのは、この話は自分がやりたいと思えることに向かって行動していくことを勧めています。「自分自身をしつける”parent yourself”」嫌なことでもできるようにすると表現していますが、その瞬間的につらい行動をとることで、将来的に良いこと楽しいことがあるとポジティブなイメージができる目的に向かう行動です。

 やっても良いことがなさそうだけれど、やらないと怒られるからとか、仲間に(組織に)いられなくなるからといった罰を回避するために行動するわけではありません。

 

 新入社員研修中だったり、営業部署への配属直後の新入社員の人たちが、駅前で大声で歌を歌わされたり、とにかく誰でも良いから名刺交換してもらおうとしてたりするのを見聞きすると(最近はだいぶ少なくなったと思います)その狙いと行動がはたして合致しているのか疑問です。
 「とにかく行動すれば良い」という考えで、馴染んでその後上手くいく人もいますが、馴染めなくてドロップアウトする人もいます。篩(ふる)いにかけて残った人だけ伸ばしていく方が企業の戦略として楽なのかもしれませんが、それでは組織としての多様性は失われてしまいます。

 

参照
How to Stop Screwing Yourself Over” Mel Robbins 2011 TEDxSF
Mel Robbins 個人サイト https://melrobbins.com/
The 5 Second Rule: Transform Your Life, Work, and Confidence with Everyday Courage ”(未邦訳)

 

自分の「強み」を知って幸福度を高める

 (新しい職場や新入社員との人間関係で悩んでいる方にもおススメです。)

 VIA研究所blog「誰でももっと幸せになれる単純なエクササイズ”Anyone Can Boost Happiness With This Simple Exercise”」から。

 VIAの提供している強み診断を使って幸福度を高めるためのエクササイズです。

 
 VIAは無料で性格の強みを診断してくれるサービスを提供しています。結果は24の性格の強みについて順位をつけて教えてくれます。有名なストレングスファインダーと似ていますが、こちらは無料で最下位まで出してくれます。
【Take the Free Character Strengths Test】

 設問が120問ありますが、日本語でも使えるのでサクサク進められます。 
 自己理解を深めるには性格診断は良い方法のひとつです。せっかく分かった強みをどう活かせば良いのかについては有料でレポートを取得できます。人から直接教えて欲しければ、ストレングスファインダーなら国内にも認定を持っている人が多数いるので、ストレングスファインダーの方が良いかもしれません。
 
 さて、あなた自身の強みが判明したら、それを使って幸福度を上げることができます。

 やり方は、最上位だった強みを普段と違う方法で1週間使ってみるという単純なものです。

As a refresher, the intervention called “use your signature strengths in new ways” asks people to take the VIA Survey , choose one of their highest strengths, and then use that strength in a new way each day for one week.
 再調査として「あなたの強みを新しい方法で使う」という介入は、VIAサーベイを受けた人々に彼らの最も高い強みのうちの1つを選び、そして1週間毎日新しい方法でその強みを使うように求めました。

 

The results were clear: using signature strengths in new ways boots happiness and life satisfaction and lowers depression.
 その結果は明らかでした。新しい方法で得意な強みを使用すると、幸福と人生の満足度が高まり、鬱病が軽減されました。

 元々、その人にとって得意な強みなので応用方法を考え出すこともそれほど難しくないのだと思います。簡単にできて効果がある(うまくいかなくても変更方法などがすぐに思いつく)ので自己効力感が高まるのではと思います。

 

 この手の性格診断は強みを知ることも役立ちますが、最下位付近を知れることも大切です。最上位と最下位はある程度までは裏返しの関係にもなるので、普段はその強みを発揮することが少なくなります。そうすると、その強みを上位に持っている人の行動が理解しにくくなります。
 相手が自分とは違う強みを発揮しているのだと思えば、相手のことを受け容れやすくなります。

 4月になり新しい職場やそれに伴う人間関係の変化で戸惑われている方のお役に立てれば幸いです。
参照
Take the Free Character Strengths Test ※要アカウント登録
Anyone Can Boost Happiness With This Simple Exercise”Dr. Ryan Niemiec 2018 VIA Blog
New Ways To Happiness with Strengths”Dr. Ryan Niemiec 2012 VIA Blog
The Impact of Signature Character Strengths Interventions: A Meta-analysis” Nicola S. Schutte John M. Malouff 2018 Journal of Happiness Studies

ヘミングウェイ効果:続けるためのモチベーションの上げ方

 Scientific Americanの記事「失敗を成功に変える方法”How to Turn Failure into Success”」から。

 

 心理学の用語で「ツァイガルニック効果」というものがあります。人は、完成した課題よりも未完成の課題の方が記憶に残りやすいというものです。
 逃した魚は大きいということわざもあります。あとちょっとで手に入ったとか、完成できると思っていることを途中で止められると、残念な気持ちで悔しくなるので完成させたいと思ったり、実際よりも大きく価値があったように記憶するのでしょう。

 ヘミングウェイは、この途中で止められると完成させたくなるという心理を執筆のモチベーションを保つのに使っていたようです。
 文章を節ごとに書き上げるのではなく、わざと途中の区切りの悪いところで一日の執筆を止めることで、翌日もすぐに取り掛かれるようにしていました。

The Hemingway effect: How failing to finish a task can have a positive effect on motivation
「ヘミングウェイ効果:仕事を終えられないことがモチベーションにプラスの効果をもたらす可能性がある」
In sum, the findings of this study indicate that under certain conditions, failure to finish a task can have beneficial effects on motivation to persist and continue the task. Implications for practice – particularly in educational contexts – are discussed.
要するに、この研究の発見は、ある条件下では、仕事を終えられないことが、仕事を持続させ続けるための動機づけに有益な効果をもたらし得ることを示している。特に教育の文脈で実践への影響が議論されています。
上記は「Thinking Skills and Creativity」より引用

 完了させることでえられる達成感を中途半端に阻まれるので 、次回取り組む時に完了できることがメンドクサさを超える報酬になります。
 取り組むと報酬があると期待できるのでモチベーションが上がります。
 
 ポイントは完了させる方法が分かっていることで、どうすれば完了させられるのか、まるで見当がつかない問題では効果が薄いように思います。

 
 途中で投げ出さずに続ければ目標に到達できる(完了できる)確率は上がります。

Couch, whose work was also featured in the special issue, adds that we “should really be thinking of failure as part of a process of iterating toward success.”
その仕事が特集号にも掲載されたCouchは、「私たちは本当に成功に向かって繰り返すプロセスの一部として失敗を考えるべきである」と付け加えます。

 目標未達=失敗と捉えるのではなく、成功までの途中経過だと考えられれば続ける気持ちにもなります。また、失敗したくないから新しいことを始めないではなく、新規の取り組みへのハードルも下がりますね。

 

 現実には期日やコストの問題で完了まで続けられないこともたくさん経験します。
 続けられなくなったから、その経験は全てが無駄で廃棄するという考え方ではなく、次のチャンスにこの経験を活かすという長期の視点で見られれば、不遇にも一喜一憂せず 取り組んでいけます。
参照
How to Turn Failure into Success” Rachel Nuwer2019 Scientific American
The Hemingway effect: How failing to finish a task can have a positive effect on motivation” Yoshinori Oyama 他 2018 Thinking Skills and Creativity

性格診断の新しい流行りになる?ダークトライアドとライトトライアド

 Scientific Americanの記事「個性の対決:ライトトライアド対ダークトライアド ”The Light Triad vs. Dark Triad of Personality”」から。

 身近にいると厄介な人の性格として、サイコパスという言葉が一時期流行りましたよね。

 それと、クラッシャー上司やサークルクラッシャーと呼ばれる周囲の人間関係に悪影響を与える人物もいます。
 そんな、あまり関わり合いになりたくない人たちの性格の3つの側面としてナルシスト、サイコパス(良心や共感の欠如)、マキャベリアイズム(戦略的搾取と詐欺)があります。
この三つの性格の傾向を複合したものがダークトライアドになります。

 

 2014年ごろから盛んに研究成果が発表されていたようですが、今回ダークトライアドの対になる性格特性の尺度としてライトトライアドが公表されました。
https://scottbarrykaufman.com/lighttriadscale/

 単純に一つの軸の反対側の性格というわけではなく、一人の人間がライト側もダーク側もどちらも併せ持っていて、普通の人はライト側が少し高いくらいなようです。

 

The average balance score of the entire sample was 1.3, suggesting that the average person is tipped more toward the light relative to the light in their everyday patterns of thoughts, behaviors, and emotions.As you can see in this scatterplot, extreme malevolence is extremely rare in the general population:
 サンプル全体の平均バランススコアは1.3であり、平均的な人は明るい日常の思考、行動、および感情のパターンの中で、ライトトライアドの側に傾いていることを示唆しています。この散布図からわかるように、極端な悪意は一般の人々には非常にまれです。
※図は元記事でご覧ください。

 

 性格診断は人気がありますが、それにこだわり過ぎると相手のことを正しく見れなくなってしまう危険もあります。
 同じ人でも状況によっては(特に高いストレスに晒されていると)全く別の行動を選ぶことが普通です。相手の状況を理解せずに一方的に思い込みだけで判断すると、相手との関係を崩すことにもなります。

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信頼は人間関係の基礎

 TED「信頼を構築(再構築)する方法”How to build (and rebuild) trust”

 個人の関係も、組織としても信頼関係が崩れていると上手くいきません。
 システムやルールを作って厳しく適用すれば、信頼関係がなくても思った通りの結果が出るという論もありますが、お互いに信頼していないと自己の利益を優先してズルや誤魔化しが横行します。

 ルールを設定する側が事前にあらゆる事態を想定し、すべての対処方法を決めておくことは現実的でもありません。

 また、ルールで雁字搦めにすれば、それを超えて行動してくれることもなくなります。
 韓非子のように、親切心からの行動でも職分でなければ処罰するという極端さでは組織は硬直化します。

 Freiさんは信頼されるための3つの要素を上げています。

 

There’s three things about trust. If you sense that I am being authentic, you are much more likely to trust me. If you sense that I have real rigor in my logic, you are far more likely to trust me. And if you believe that my empathy is directed towards you, you are far more likely to trust me.
 要素は3つあります 誠実な人間だと思われたら 私は信頼されるでしょう 話に筋が通っていると感じられたら 私は信頼されるでしょう そして 私が相手に 共感していると思われれば 私はきっと信頼されるでしょう この3つの要素が働くと 強い信頼関係が築けます。

 

 1.誠実さ、2.言行一致、3.共感。
 この三つが欠けているリーダーの下では働きたくないですね。

 

And to the leaders in the room, it is your obligation to set the conditions that not only make it safe for us to be authentic but make it welcome, make it celebrated, cherish it for exactly what it is, which is the key for us achieving greater excellence than we have ever known is possible.
そして、ここにいるリーダー格の皆さん。あなた方の義務は 皆がありのままで(誠実で)いられる安心できる環境を整えるだけでなく、これを歓迎し讃え、ありのままでいることを大切にすることです。これが未知の領域に達する優れた成果を遂げる鍵となります。

 

But when we figure out this, when we figure out how to celebrate difference and how to let people bring the best version of themselves forward, well holy cow, is that the world I want my sons to grow up in。
つまり、異なる意見をほめたたえ、その人の最大の力を引き出す方法を見いだすことができれば、 なんとそれこそが私たちの子供が育って欲しい世界なんです。

 

 ここではリーダーが、皆にとって安心できる環境を整える義務があると説明していますが、実際はリーダーもありのままでいられない不安やプレッシャーを感じています。
  チームであるのなら、安心できるような心理的安全のある環境を実現するには、全員が実現のためにかかわる必要があります。

 自分と異なる意見を持つ相手でも、その人のことを信頼できるまで相互理解を深めることが最初の一歩なのだと思います。
参照
How to build (and rebuild) trust” Frances Frei 2018 TED
心理的安全がチームの成果をアップする