社内での協働と競争について

 Psychology Todayの記事「協働相手が競争相手に変わるとき”When Collaborators Turn Into Competitors”」を読んで。

 働き方改革と世間ではよく言われていますが、先日某所でお会いした管理職の方の話しです。
 その組織では働き方改革推進のために部署ごとに残業時間の削減率が一覧の棒グラフで張り出されるそうです。
 他部署と競争意識を持たせて削減する目論見なのは分かります。今のところはこの競争意識を刺激する方法もうまく機能しているそうです。
 でも、本来であれば全社で取り組んで残業時間の不公平をなくして削減していく方が良いはずなのに、この方法では全体最適ではなく部分最適で自分の部署を優先して残業時間を減らすような方法を取りかねません。
 もしくは見かけ上の残業を減らすために隠れ残業が横行してしまうような危惧もあります。
 本来ならば全ての働く人の負担を減らすことが働き方改革の趣旨のはずなのに、一部の人にしわ寄せが行くようでは本末転倒でしょう 。

 

Collaborating with people pursuing the same outcomes as you—whether that’s at school in a study group, at work with others trying to climb the corporate ladder, or something more personal, like trying to achieve a fitness goal—can be motivating.
 学校での勉強や会社内で昇進のために働いたり、フィットネスで目標を達成しようとするような個人的な取り組みでも、あなたと同じ目標を目指す人々とコラボレーションすることはやる気につながります。

 

But, at some point, this collective focus has another impact on participants—individuals pursuing similar goals start comparing themselves to each other.
しかし、ある時点で、この集合的な焦点が参加者に別の影響を与えます。同様の目標を追求している個人は、お互いを比較し始めます。

However, these competitive feelings may also create a sense of “pseudo-competition.”
しかし、これらの競争的感情は「疑似競争」という感覚を生み出す可能性もあります。

 

As the “competition” increases, people perceive their counterparts as a threat to their goal performance. At that point, the focus shifts from collaboration to earning positional gain against others. That’s when collaborators can turn into backstabbers.
「競争」が激化するにつれて、人々は相手を自分の目標達成への脅威と捉えています。その時点で、焦点はコラボレーションから他の人より有利な立場を得ることに変わります。協働者が裏切者に変わるのはそのときです。

 

There’s a cost to the individual and potentially the group when collaborators become pseudo-opponents. Harming others’ performance is likely to create hurt feelings, anger, and distrust. The negative consequences of sabotage on one’s own goal are clear; what we also can’t ignore are the potential negative interpersonal consequences among collaborators and teammates.
 協働相手が疑似的な競争相手になると、個人そして場合によってはグループにコストがかかります。他人のパフォーマンスを損なうと気持ちを傷つけたり怒りや不信感が生じる可能性があります。サボタージュが自分の目標に悪影響を及ぼしていることは明らかです。また、協働相手やチームメイトとの人間関係への悪影響も無視できないものです。

 
 残業時間はもちろん一つの指標になると思いますが、仕事や職場への満足度ややりがい充実感といった従業員満足度(Employee Satisfaction)も指標となります。

 他人の足を引っ張ってでも自分の目標達成を優先したくなるような制度や仕組みを作らないように慎重な取り組みが必要です。

参照
When Collaborators Turn Into Competitors” Szu-chi Huang Ph.D. 2019 Psychology Today
働き方改革特設サイト(厚生労働省)
囚人のジレンマ

想像力が組織をまとめてくれる

 TEDGlobalLondon「なぜ人類は台頭したのか”What explains the rise of humans?”

 「サピエンス全史」や「ホモ・デウス」の著者であるユバル・ノア・ハラリさんの動画です。時期的には「ホモ・デウス」の出版される少し前のようです。

 単独ではチンパンジーにも勝てない人間が、何故世界中に広がって繁栄できているのか。
 この謎に対して「想像力を獲得したから」と説明しています。

The answer is our imagination. We can cooperate flexibly with countless numbers of strangers, because we alone, of all the animals on the planet, can create and believe fictions, fictional stories. And as long as everybody believes in the same fiction, everybody obeys and follows the same rules, the same norms, the same values.
 答えは私たちの想像力です。私たちは無数の見知らぬ人たちと柔軟に協力することができる地球上で唯一の存在です。そして、皆が同じフィクションを信じる限り、誰もが同じ規則、同じ規範、同じ価値観に従います。

 この想像力があるから、同じ虚構を信じて良く知らない他人とでも集団を作り共力できるのです。

 

 虚構というと字面から嘘とかでっち上げ(フィクション=ありえない作り話)のイメージが先行するのですが、そういったネガティブな意味ではなく、理想や希望に近いものです。

 経営戦略を作る時や個人のコーチングでも、まずビジョンを描きましょうと言います。この時のビジョンはミッション、目的、ありたい姿、価値、ビッグピクチャー等々表現は様々ですが、フィクションという言い換えも可能です。ただ、多くの人を巻き込み、強くそれを信じるにはやる気が出るような言葉を選んだほうが良さそうです。

 チームビルディングではチームのビジョンがメンバーそれぞれのビジョンと何らかのつながりがある事がモチベーションにも影響します。
 チームが良くなれば(ビジョンを達成すれば)自分にも良いことがあると思えればやる気も出ますが、チームがビジョンを達成しても自分には何もなければどこか他人事にしかなりません。

 

 人類が作り出した虚構としてお金、宗教、法人、国家など説明されますが、詳しくは「サピエンス全史」を一読されることをお勧めします。
 上下巻でページ数もそれなりにありますが興味があればすぐに読み終わるくらいに面白いです。
参照
What explains the rise of humans?” Yuval Noah Harari 2015 TEDGlobalLondon
サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福” Yuval Noah Harari 2016 河出書房新社

信頼は人間関係の基礎

 TED「信頼を構築(再構築)する方法”How to build (and rebuild) trust”

 個人の関係も、組織としても信頼関係が崩れていると上手くいきません。
 システムやルールを作って厳しく適用すれば、信頼関係がなくても思った通りの結果が出るという論もありますが、お互いに信頼していないと自己の利益を優先してズルや誤魔化しが横行します。

 ルールを設定する側が事前にあらゆる事態を想定し、すべての対処方法を決めておくことは現実的でもありません。

 また、ルールで雁字搦めにすれば、それを超えて行動してくれることもなくなります。
 韓非子のように、親切心からの行動でも職分でなければ処罰するという極端さでは組織は硬直化します。

 Freiさんは信頼されるための3つの要素を上げています。

 

There’s three things about trust. If you sense that I am being authentic, you are much more likely to trust me. If you sense that I have real rigor in my logic, you are far more likely to trust me. And if you believe that my empathy is directed towards you, you are far more likely to trust me.
 要素は3つあります 誠実な人間だと思われたら 私は信頼されるでしょう 話に筋が通っていると感じられたら 私は信頼されるでしょう そして 私が相手に 共感していると思われれば 私はきっと信頼されるでしょう この3つの要素が働くと 強い信頼関係が築けます。

 

 1.誠実さ、2.言行一致、3.共感。
 この三つが欠けているリーダーの下では働きたくないですね。

 

And to the leaders in the room, it is your obligation to set the conditions that not only make it safe for us to be authentic but make it welcome, make it celebrated, cherish it for exactly what it is, which is the key for us achieving greater excellence than we have ever known is possible.
そして、ここにいるリーダー格の皆さん。あなた方の義務は 皆がありのままで(誠実で)いられる安心できる環境を整えるだけでなく、これを歓迎し讃え、ありのままでいることを大切にすることです。これが未知の領域に達する優れた成果を遂げる鍵となります。

 

But when we figure out this, when we figure out how to celebrate difference and how to let people bring the best version of themselves forward, well holy cow, is that the world I want my sons to grow up in。
つまり、異なる意見をほめたたえ、その人の最大の力を引き出す方法を見いだすことができれば、 なんとそれこそが私たちの子供が育って欲しい世界なんです。

 

 ここではリーダーが、皆にとって安心できる環境を整える義務があると説明していますが、実際はリーダーもありのままでいられない不安やプレッシャーを感じています。
  チームであるのなら、安心できるような心理的安全のある環境を実現するには、全員が実現のためにかかわる必要があります。

 自分と異なる意見を持つ相手でも、その人のことを信頼できるまで相互理解を深めることが最初の一歩なのだと思います。
参照
How to build (and rebuild) trust” Frances Frei 2018 TED
心理的安全がチームの成果をアップする

尊重し合える場所が良い職場

 TED「同僚を尊重することがビジネスに良い理由”Why being respectful to your coworkers is good for business”」から。

 尊重までいかなくても、相手を見下さないということは良い人間関係を築くうえで重要です。

 暴言や脅迫まがいになるとパワハラですが、そこまでひどくなくても見下されたような失礼な言動や態度を受けると、やる気だけではなく能力そのものが低下して仕事のクオリティが下がります。
 事例はイスラエルでの医療チームですが、どの産業でも変わりありません。

Researchers in Israel have actually shown that medical teams exposed to rudeness perform worse not only in all their diagnostics, but in all the procedures they did. This was mainly because the teams exposed to rudeness didn’t share information as readily, and they stopped seeking help from their teammates. And I see this not only in medicine but in all industries.
 イスラエルの研究者たちは、失礼にさらされた医療チームが、すべての診断においてだけでなく、彼らがしたすべての手順においても、より悪い成績を収めていることを実際に示しました。これは主に、失礼に晒されたチームがそれほど簡単には情報を共有できず、チームメイトからの助けを求めるのをやめたためです。そしてこれは医学だけでなくあらゆる産業で見られます。

 

 見下すような態度をされて心理的な安全がなくなると、チーム内で会話が少なくなり情報共有ができずにミスが増え創造性も低下します。
 その反対に、心理的安全があると感じられるチームでは仕事の効率も上がります。

 相手のことを大切に思っていると伝える態度に特別なことはそれほど必要ありません。

Well, the nice thing is, it doesn’t require a huge shift. Small things can make a big difference. I found that thanking people, sharing credit, listening attentively, humbly asking questions, acknowledging others and smiling has an impact.
 いいことに、大きな変更は必要ありません。小さいことで大きな違いが生まれます。私は、人々に感謝すること、信用を共有すること、注意深く聞くこと、謙虚に質問をすること、他人を認めること、そして微笑することが影響を与えることを見出しました。

 

 医療機関のOchsner Health Systemでは、人と近づいたら3mで笑顔でアイコンタクトし1.5mで挨拶するよう決めて実行したところ患者の満足度が上がりました。

 キャンベルスープの社長(2001-2011)として業績を回復させたダグ・コナントは、相手を大切に思っていることを示す方法として手書きの手紙を渡していました。
 その数は3万人以上になるそうです。1年3000枚としても1日10枚ぐらい書いている計算になります。多分メモ書きぐらいのものが多かったのでしょう。それでも効果があるようです。

 

What I know from my research is that when we have more civility environments, we’re more productive, creative, helpful, happy and healthy.
私の研究から知っていることは、私たちがより礼儀正しい環境を持つとき、私たちはより生産的、創造的、親切、幸せ、そして健康であるということです。

 

 このことがお互いに共通の認識や常識になっている社会だと住みやすいですよね。
参照
Why being respectful to your coworkers is good for business” Christine Porath 2018 TEDxUniversity of Nevada
Mastering Civility: A Manifesto for the Workplace” (未邦訳) Christine Porath 2016 Grand Central Publishing

ダイバーシティが活きるチーム

 Scientific Americanの記事「チームの多様性を活かす方法”How to Capitalize on Your Team’s Diversity”」から。

 

 ダイバーシティには基本的に賛成派です。
 ただし、とにかく違う属性の人を集めれば良いというものでもありません。場合によっては効率が落ちてしまいます。

 

Having diverse group members can also lower cohesion and raise conflict due to interpersonal differences. And so, sometimes, diverse groups actually underperform homogeneous groups on creative tasks.
 多様なグループメンバーを持つことは、個人間の違いによって結束力の低下や対立を引き起こす可能性もあります。そのため、場合によっては多様性をもつグループが創造的なタスクに関しては均一的なグループの結果を下回ることがあります。

 

 多様性と言うと性別や国籍が分かりやすいですが政治的信条の右派左派の違いでも、話しが続けられる関係を維持していれば 良い効果が出ます。
 さらに橋渡し役として、どちらにも属していないが両方について理解のある「カルチャーブローカー」になる人がチームにいればより理想的なのだと思います。

 

Specifically, groups need members who are prepared to think carefully about how to best facilitate interactions among people who have different backgrounds and may look at the world differently. People with multicultural experience are best suited to this task: They can act as a bridge between their teammates who have experience with only one culture represented in the team.
 具体的には、グループには異なった背景から世界を違った視点で見ているような人たち
の間で、やり取りを促進する方法について慎重に考える準備ができているメンバーが必要です。
 多文化の経験を持つ人はこのタスクに最も適しています。彼らはチームの主流であるひとつの文化だけ経験しているチームメイト同士の橋渡し役として働くことができます。

 

Cultural outsiders instead relied on their position as a neutral third party to draw information and ideas out of their teammates about their cultures. So, during the team discussions, they often asked the other team members questions and proactively invited them to share relevant cultural knowledge.
 文化的な部外者は、彼らの文化についてチームメイトから情報と考えを引き出すために、中立な第三者としての立場をとりました。
 そのため、チームディスカッションでは、他のチームメンバーに質問をしたり、関連する文化的知識を共有するように積極的に要請したりしました。

 

 

 記事からは離れますが、 ダイバーシティは国籍(文化)だけではなく性別や年代などの自分と違う属性を経験できないものも含まれているはずです。
 また、カルチャーブローカーになる人がいなくとも、メンバー各自に相手の話しを聞く姿勢と話せる心理的安全があれば創造性は高まります。
 同じ文化の人だからと言って、自分にとっての常識や暗黙の了解が通じるわけではありません。力関係で一方的に自分の常識を押し付けることがチームの創造性を殺します。
参照
How to Capitalize on Your Team’s Diversity”Francesca Gino 2018 
Cultural Brokerage and Creative Performance in Multicultural Teams” Sujin Jang 2017 Organization Science
How “cultural brokers” improve team creativity”Sujin Jang 2018 INSEAD
The Wisdom of Crowds Requires the Political Left and Right to Work Together”Dana G. Smith 2019 Scientific American

講座のお知らせ

 GW連休明けの5月9・10日に滋賀のJIAM(全国市町村国際文化研修所)で「職場のチーム力アップ研修」に登壇します。

 公財)全国市町村研修財団の開催なので自治体にお勤め方が対象です。2日間コースで1日目本間直人さん、2日目私岡崎のお得なコースになってます(‘ω’)ノ

 申し込みは早く埋まるようなので締め切り3月26日ですが早めのお申込みをおすすめしてます。

https://www.jiam.jp/workshop/

 

3月16日(土)13時~(新宿)

「EFカード研究会」

https://kokucheese.com/event/index/556335/

 相手のポジティブなところを見つけやすくなる、自己肯定感が上がる、チームの雰囲気が良くなるなどいろいろ効果的なカードです。

 カードを職場で使ってみた方や研修講師をされている方からも、参加者同士の会話がはずんで場の雰囲気が良くなったなどのご好評をいただいています。

 EFカードは講座に参加して実際にカードの効果を体感された方のみお譲りする方法で販売しています。この機会にぜひご参加ください。

心理的安全がチームの成果をアップする

 昨年、googleはチームの業績を向上させる要因についての研究成果を発表しました。

 その結果によれば、心理的安全、信頼性、構造、意味、インパクトの5つが要因となりえたものでした。

 

 この中でも「心理的安全」が特に重要でした。

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 心理的安全が確保されたチームで働いているメンバーは離職率も低く、チームメイトからの多様なアイデアを活用することでより多くの収益をもたらし、その効果はおよそ2倍に達すると経営層から評価されています。

(引用原文 Tool: Foster psychological safety

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見えるケガ、見えないキズ

 交通事故をわざと起こす人はいません。(もちろん、わざとだと事故ではないというそもそも論がありますが)

 事故で人に怪我を負わすと、相手側によほどの過失がなければ、普通の人は二度と事故を起こさないようにと反省して、その後は注意を払って安全運転を心がけるものだと思います。それでも不幸にも二度、三度と事故を起こしてしまうこともあります。

 そうした場合、自分の運転技術や注意力の何が悪いのかと悩んだり、人によっては生活に支障が出ないなら、車の運転をやめてしまうこともあります。

 一般的な感覚で人に怪我を負わしたり、故意ではなくとも人を傷つけてしまうと、反省するものなのです。

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