ストレス対策には寒中水泳?

投稿日: 2019年3月30日

 Psychology Todayの記事「寒中水泳がストレス反応を改善する”How Cold Water Swimming Improves Stress Management”」から。

 日本だと寒中水泳の他にも滝行や水垢離(みずごり)がありますが本当に効果があるみたいです。
 サウナの後の水風呂が好きな人のハマる理由もこういう事なんでしょうね。

On receiving a distress signal about a threat (such as a stalking tiger, or a dunking in cold water), the hypothalamus triggers the sympathetic nervous system by causing a burst of epinephrine (aka adrenaline) to be released from the adrenal glands.
 脅威(虎が追いかけてくるもしくは冷たい水に落ちる)に関する苦痛信号を受信すると、視床下部は副腎から放出されるエピネフリン(別名アドレナリン)で交感神経系を活性化します。

 

The release of cortisol keeps the system revved up until the threat is perceived to have passed and action is no longer required, and then the para-sympathetic nervous system takes over and returns the body to a resting state.
 コルチゾールの放出は、脅威が通過したと見なされて行動が必要なくなるまでシステムを活性化させ続けます。その後、副交感神経系が引き継いで身体を休止状態に戻します。

 

 3分程度冷たい水に浸かると他のストレスへ対応する力も鍛えられるという研究結果が出ています。

A key study has shown that repeated three-minute dips in cold water over a period of time significantly reduces the adrenaline-driven sympathetic response to a different stressor and increases the para-sympathetic activity that calms the body down.
重要な研究結果として、ある期間にわたって冷たい水の中へ3分間漬かることを繰り返すと著しく異なるストレッサーへのアドレナリン主導の交感神経反応を減らして、そしてそれを静める副交感神経の活動を増やし、体を落ち着かせることを示しました。

 

 荒行的なものは終わった時の解放感で錯覚しているだけだと思っていたので、繰り返すことで副交感神経も鍛えられてリラックスすることが上手くなるとは意外でした。
 冷水だけではなく他のストレスに対しても対応力が上がるようです。

 現代人は飢餓や肉食獣に追われるような本当の命に関わるストレスを受けることがほとんどありません。そのために、日常生活のストレスを過大視しすぎて不安障害など健康を損ねることもあります。
 冷水浴で肉体的な命の危機につながるようなストレスもコントロール可能(乗り越えられる)と体感することでストレス全般に強くなれます。

 この話でシーナ・アイエンガーの「選択の科学」の冒頭で水槽に落ちてすぐに諦めて溺れ死んだネズミと、何時間も泳ぎ続けたネズミの違いを思い出しました。泳ぎ続けることができたネズミは事前に何度も水を掛けられて慣らされていたのです。

 根性論的なことは嫌いなのですが、社会的な慢性ストレスに強くなるためのトレーニングとして、自分でコントロールできてトレーニング後にはリラックスと回復がきちんとできる環境が整ているのなら荒行みたいなことも役立つのかと思いました。

参照
How Cold Water Swimming Improves Stress Management” Sarah Gingell 2019 Psychology Today
”‘Cross-adaptation’: habituation to short repeated cold-water immersions affects the response to acute hypoxia in humans
” Heather C Lunt 他 2010 The Journal of Physiology
Cold water immersion: kill or cure?” M. J. Tipton 2017 Experimental physiology 
選択の科学”シーナ・アイエンガー 2010 文藝春秋

カテゴリー: 雑感 タグ: , , , , ,